2025年9月25日
犬も貧血になるの?そう思う方もいらっしゃるかもしれません。人では貧血というと立ち眩みや倦怠感などが想像できます。
犬も人間と同様に、貧血にかかることがあります。犬の貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンの量が不足している状態を指します。これにより、犬の体には酸素が十分に供給されず、様々な症状が現れることがあります。
犬の貧血とは何か
貧血の定義
貧血の定義は、血液中の赤血球やヘモグロビン、ヘマトクリット値が正常な範囲を下回る状態を指します。
- 赤血球:体内の酸素を運ぶ重要な役割を果たしている
- ヘモグロビン:赤血球に含まれる酸素を運ぶためのタンパク質
- ヘマトクリット値:血液全体に占める赤血球の割合
犬の正常なヘマトクリット値は、犬種や年齢、性別などによって異なりますが、一般的には37-55%が正常値とされています。これを下回る状態が続くと、内臓や筋肉への酸素供給が不足し、さまざまな症状が現れてきます。
赤血球の役割
赤血球は、犬の体内で非常に重要な役割を果たしています。まず、上記で示した通り赤血球の主な機能は酸素を運搬することです。
肺で酸素を取り込み、全身の細胞に供給します。この酸素供給が正常に行われることで、犬は活発に動き回ることができるのです。
さらに、赤血球は二酸化炭素を回収する役割も持っています。細胞が酸素を使用した後には、二酸化炭素が生成されます。
赤血球はこれを肺へ戻し、呼吸によって排出します。したがって、赤血球は体内のガス交換において中心的な役割を担っています。
正常に産生された赤血球の寿命は犬では、110日~120日といわれています。新たに産生される赤血球と寿命を迎える赤血球のバランスが取れている場合は、赤血球は一定の量を保ちます。
赤血球の産生に何らかの異常が生じるなど、バランスが崩れることで貧血が起きます。
犬の貧血の主な症状
見た目の症状
犬の貧血における見た目の症状は、非常に重要なサインです。
まず、毛艶が悪くなったり、皮膚が乾燥したりすることも見られます。
健康な犬は柔らかく、艶のある毛並みを持っていますが、貧血にかかるとその輝きが失われます。さらに、体全体がややだるそうに見えることもあります。
また、歯茎や目の周りの粘膜がピンクから白っぽくなることがあります。貧血のタイプにもよりますが、白目や歯茎、皮膚の色が黄色く見えるようになったり、濃い黄色の尿が見られることがあります。
この状態は、血中の酸素供給が不足していることを示すもので、肉眼でも確認できることが多いです。普段の色合いから変わった場合は、注意が必要です。
最後に、犬がこれまで以上に興奮しやすくなったり、落ち着きがなかったりすることも、見た目で分かる症状の一部です。
これらの症状が見られた場合は、早急に専門家に相談することが大切です。愛犬の健康を守るためには、早期の診断と適切な治療が必要です。
行動や体調の変化
愛犬の普段の行動をよく観察していると、急に元気がなくなったり、遊びたがらなくなることがあります。
普段は活発に走り回っていた犬が、急に散歩の途中で立ち止まったり、休みたがるようになる場合には、何らかの問題が潜んでいるかもしれません。
また、体調の変化も見逃せません。食欲の減少や、いつも以上に寝ている時間が増えることも貧血の兆候の一つです。このような症状が見られた場合は、愛犬の体調を気に掛け、注意深く観察することが重要です。
犬の貧血の原因
産生低下による貧血
産生低下による貧血は、犬の体内で赤血球が十分に作られないことから発生します(日非再生性貧血)。この状態は、さまざまな病気や要因によって引き起こされることがあります。
特に、腎臓機能が低下することで、赤血球を生成するホルモンであるエリスロポエチンの分泌が減少することがよくあります。
また、栄養不足も重要な原因の一つです。人でも良く言われている鉄分やビタミンB12を摂取できていないと、赤血球の生成が妨げられます。特に、手作り食を与えている場合には、栄養バランスに注意することが重要です。
それに加えて、感染症や炎症が体内で発生すると、赤血球を作る骨髄の働きが抑制される場合もあります。このような病気の兆候に気づいたら、早急に獣医師に相談することが大切です。
破壊による貧血
通常、赤血球は一定の寿命があり、古くなったものは身体によって新しいものに置き換えられています。しかし、様々な理由で赤血球が過剰に破壊されると、貧血が引き起こされます。
犬の場合、免疫系の異常や特定の感染症が赤血球を攻撃し、破壊してしまうことがあります。例えば、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、身体が自己の赤血球を誤って攻撃する状態です。この状態では、犬は元気がなくなったり、色素異常を示したりします。
喪失(出血)による貧血
出血は急性または慢性で起こることがあり、それによって赤血球が失われ、貧血が引き起こされるのです。
急性出血は、外傷や手術、内部出血などによって起こります。特に事故や外的な要因で外部からの大きな出血が発生した場合、一気に多くの赤血球が失われるため、早急な治療が必要です。
慢性出血は、消化管の病気や寄生虫感染などによって、少しずつ長期間にわたり出血する状態を指します。この場合、愛犬は徐々に貧血の症状が進行していきます。したがって、犬の様子に注意し、異変を感じたら早めに獣医師に相談することが大切です。
犬の貧血のタイプ
免疫介在性溶血性貧血
免疫介在性溶血性貧血は、犬の貧血の一種で、体の免疫システムが自己の赤血球を誤って攻撃することにより発生します。
正常な赤血球が破壊され、貧血が進行することで、様々な健康問題が引き起こされます。
この病気の症状には、元気の喪失、食欲減退、黄疸、さらには体温上昇や呼吸困難などがあります。
特に黄疸は、眼の粘膜や歯茎が黄色くなることで目立つため、早期に気づくことができるかもしれません。
原因は様々で、自己免疫疾患や特定の感染症、さらには薬剤の影響が考えられます。治療には免疫抑制剤の使用や、必要に応じて輸血が行われることがあります。
愛犬に異変を感じた場合は、すぐに獣医師に相談することが重要です。早期の対応が愛犬の命を救うことにつながります。
腎性貧血
腎性貧血は、腎臓の機能が低下することによって引き起こされる貧血の一種です。
腎臓は、赤血球の生成を促進するエリスロポエチンというホルモンを分泌する役割がありますが、腎臓に問題があると、このホルモンの生成が減少します。これにより、体内で十分な赤血球が作られず、貧血が発生します。
このタイプの貧血は、特に高齢犬や慢性腎不全を抱える犬で見られることが多いです。
腎性貧血の症状としては、元気がない、食欲が低下する、さらには呼吸が浅くなるといったものがあります。これらの症状が続く場合は、適切な診断と治療が必要です。
犬の貧血の診断方法
血液検査
獣医師は、犬の血液サンプルを取り、成分を分析することで、赤血球やヘモグロビンの量を測定します。これにより、貧血の有無やその程度が明らかになります。
血液検査では、赤血球数だけでなく、白血球や血小板の数も確認します。これにより、感染症や炎症の有無についても同時に評価が行われます。また、比重や血漿蛋白質の測定を通じて、体内の水分状態や栄養素のバランスも判断できます。
検査結果をもとに、獣医師は愛犬の貧血の原因を特定する手がかりを得ます。たとえば、鉄分不足や寄生虫の存在、内臓の機能不全など、さまざまな要因が考えられるため、早期の診断が愛犬の健康を守るためには欠かせません。
その他の検査方法
犬の貧血を症状とするほかの疾患を特定するために、便検査も挙げられます。
寄生虫感染が原因で貧血が引き起こされている場合、便に寄生虫の卵が存在することがあります。便検査を行うことで、このような感染症の有無を確認できます。
また、超音波検査やX線検査も有効です。これらの検査により、内臓の大きさや形状、または腫瘍などの異常をチェックすることが可能です。特に、肝臓や脾臓の異常が貧血に関連している場合がありますので、これらを把握しておくことは重要です。
さらに、骨髄検査も必要になることがあります。骨髄は血液を生成する役割を持っているため、貧血の原因が骨髄の問題にある場合、骨髄の状態を確認することが診断に大きく貢献します。
犬の貧血の治療方法
薬物療法
貧血の原因によって様々な薬剤が用いられますが、まずは獣医師の診察を受けることが大切です。
例えば、特定の栄養素が不足している場合、鉄分やビタミンB12のサプリメントを処方されることがあります。これらの成分は赤血球の生成を助け、貧血を改善する効果が期待できます。
また、寄生虫による貧血の場合は、適切な駆虫薬が投与されます。寄生虫が体内に存在することで、栄養分が奪われたり、出血が引き起こされるため、これを除去することで犬の健康を守ることができます。
さらに、より重篤な場合には、ホルモン補充療法や免疫抑制剤の使用が検討されることがあります。治療法は犬の状態によって異なるため、獣医師と十分に相談し、最適な方法を見つけることが重要です。
輸血
犬の貧血が重度である場合、輸血が必要になることがあります。輸血は、血液中の赤血球を直接補う治療法で、緊急時には犬の命を救う重要な手段です。輸血を行うためには、犬の血液型を確認し、適合する血液を選ぶ必要があります。
犬にも人と同様いくつかの血液型が存在するため、誤った血液型を輸血すると重篤な反応を引き起こす可能性があります。そのため、輸血を行う際は、動物病院での専門的な検査が欠かせません。
輸血後のケアも重要で、病院では獣医師が犬の状態を観察し、必要に応じて点滴や治療を行います。また、輸血後は犬の健康状態をしっかりとチェックし、異変がないか注意深く見守ることが求められます。
このように、輸血は犬の貧血治療において非常に効果的な手段ですが、専門家の判断と適切なケアが不可欠です。
食事療法
犬の貧血に対する食事療法は、重要な治療法の一つです。まず、鉄分を含む食材を意識することが大切です。赤身の肉やレバー、魚介類には鉄分が豊富に含まれていますので、これらを積極的に取り入れると良いでしょう。
また、ビタミンB12が不足している場合も貧血の原因となりますので、卵や乳製品、魚を含めたバランスの取れた食事を心がけましょう。これらの栄養素は赤血球の生成を助けます。
さらに、葉物野菜や果物に含まれるビタミンCは、鉄分の吸収を促進する働きがあります。レバーや肉を使った料理に、ブロッコリーやパプリカなどを添えると良いでしょう。
最後に、犬の体調や年齢に応じて適切な食事量を調整し、健康的な体重を維持することも重要です。専門の獣医師や栄養士に相談しながら、愛犬に最適な食事療法を見つけてあげると良いでしょう。
犬の貧血の予防方法
定期的な健康診断
貧血は早期に発見することで、適切な治療が可能になり、愛犬の健康を守ることに繋がります。
健康診断を受けることで、血液検査を行い、赤血球やヘモグロビンの状態を確認することができます。
また、血液検査だけではなく、獣医師による身体検査も重要です。特に異常を確認することで、隠れた病気や健康上の問題を早期に見つけることができます。
愛犬が元気でいるかどうかを確認するためにも、年に1回は定期的に健康診断を受けることをお勧めします。
健康診断は、病気の予防だけでなく、愛犬が生活する上で必要な知識を得る良い機会でもあります。愛犬の健康状態をしっかり把握し、日ごろのケアに活かしていきましょう。
適切な栄養管理
愛犬に必要な栄養素をバランス良く摂取させることで、健康を維持することができます。
特に、鉄分は赤血球を作るために非常に重要な栄養素です。赤身の肉や肝臓、魚などには豊富に含まれており、手作り食を上げている方はこれらを食事に取り入れると良いでしょう。
また、ビタミンB群も活発な赤血球の生成に寄与します。特にビタミンB12は、肉類や乳製品から摂取できるため、これらを適量与えることが大切です。
さらに、食事全体の質とバランスも重要です。プレミアムドッグフードを選ぶことにより、必要な栄養素をほぼ自動的に補うことができます。
犬の貧血の治療費について
治療費の相場
治療費の相場について見ていきましょう。
犬の貧血の治療にかかる費用は、主に症状の確認のための検査費用、治療に必要な薬剤費用、再診の費用によって変動します。
まず、血液検査を行う場合、その費用は3,000円から10,000円程度が一般的です。
必要に応じて追加の検査が行われることもあり、それによって費用が増加することがあります。
これに対して、貧血の原因が寄生虫の場合、駆虫剤の処方が必要になり、1,000円から5,000円程度の費用がかかることが考えられます。
また、慢性的な貧血の場合、長期間の治療が必要になるため、治療全体の相場は10,000円から50,000円と幅広いです。
特に、病院によって料金設定は異なるため、複数の病院で見積もりを取ることも一つの手段です。
保険の利用
犬の貧血治療において、ペット保険の利用が非常に役立つ場合があります。
ペット保険に加入している場合、多くの治療費用は保険がカバーしてくれます。これにより、予期しない高額な医療費が発生した際も、経済的な負担を軽減することが可能です。
ペット保険には、主に「通院」「入院」「手術」などのプランがあり、選ぶプランによって保障内容が異なります。貧血の治療に必要な検査や治療法が保障対象に含まれているかを確認することが重要です。加入前に約款や保障内容をしっかりと読み、理解することをお勧めします。
まとめ
犬の貧血についての理解を深めることは、愛犬の健康管理にとって非常に重要です。
貧血は、赤血球やヘモグロビンの不足によって引き起こされ、さまざまな症状が現れることがあります。元気がなくなる、食欲が減るといった体のサインに気づくことで、早期に対処することが可能です。
貧血の原因は多岐にわたり、寄生虫感染や栄養不足、内臓疾患が考えられます。
これらの要因は、犬の年齢や環境、食事内容によって異なるため、定期的な健康診断を受けることが重要です。
異変を感じた場合は、早めの受診を心がけることで、適切な治療が受けられます。
愛犬の健康を守るためには、日々の観察と、愛情を持ったケアが必要です。知識を身につけることで、飼い主としてできることが増えるでしょう。
大切な家族である犬のために、今後も健康管理をしっかり行っていきましょう。