2025年8月20日/最終更新日時:2025年10月2日
犬の腎臓病は、ペットオーナーにとって非常に心配な疾患です。
腎臓は血液をろ過する重要な役割を持っていますが、何らかの原因で機能が低下すると、さまざまな症状が現れます。例えば、食欲不振や異常な水分摂取、体重減少などが見られます。
本記事では犬の腎臓病の原因や治療方法について詳しく解説していきます。
犬の腎臓病とは
腎臓では人と同様におしっこを作って、体内の老廃物を外に出すための臓器です。
そんな臓器で起こる犬の腎臓病とは、腎臓の機能が低下し、体内の老廃物や余分な水分を適切に排出できなくなる病気です。これは多くの犬に見られる疾患で、特に高齢犬に多く発症します。
腎臓が正常に働かないと、体内に毒素が蓄積し、全体的な健康状態に影響を及ぼします。
この病気は、慢性腎臓病と急性腎障害に分かれます。慢性の場合は、徐々に進行するため気づきにくいことがあります。
一方、急性腎障害は急速に症状が現れ、早期の治療が求められます。犬の腎臓病を理解することは、愛犬の健康を守るために非常に重要です。
犬の腎臓病の症状
犬の腎臓病の症状は、初期段階ではあまり目立たないことが多いですが、徐々に現れてきます。
急性腎障害の症状
急性腎障害は、数時間から数日のうちに突然発症する病気であり、症状も急激に現れます。
最初に見られるのは、食欲の低下や元気がなくなることです。愛犬がいつもと違う様子を見せた場合は注意が必要です。
また、嘔吐や下痢、口臭の悪化も急性腎臓病の兆候です。特に脱水状態になっている場合は、皮膚の弾力が失われ、目が凹んでくることもあります。このような症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診することが重要です。重症になると、早期の診断と治療が愛犬の健康を守る鍵となります。
慢性腎臓病の症状
慢性腎臓病は徐々に進行するため、初期症状が見逃されがちです。まず、食欲の低下や体重減少が見られます。飼い主が気づくことが難しいですが、愛犬の食事量に変化があれば注意が必要です。
次に、異常な水の摂取量や頻尿が特徴的です。この場合、腎臓の機能が低下している可能性があります。また、脱水症状や乾いた口、強い口臭が現れることもあります。
さらに、元気がなくなる、活動量が減るなどの行動変化も見逃せません。これらの症状は慢性腎臓病のほか、その他疾患にもみられる症状であるため、これらの症状が見られた場合は、早期に獣医師の診断を受けることが重要です。
慢性腎臓病のステージ
慢性腎臓病では、その進行度合いに応じて重症度を測るいくつかのステージに分けられます。
具体的には腎機能残存率に基づく国際獣医腎臓病研究グループのガイドラインにより、ステージ1から4までに分類され、ステージの番号が大きいほど重症といわれています。
- ステージ1:症状がほとんど見られず、血液検査や尿検査のみでは見落とされる可能性も。
- ステージ2:無症状の場合もありますが、食欲不振などが見られることがあります。飲水量が増えて、多飲多尿の傾向も見られます。
- ステージ3:あきらかな食欲不振が見られ、体重の減少、嘔吐や下痢などの消化器症状、貧血・口内炎など様々な症状が現れます。
- ステージ4:ステージ3の症状に加え、けいれん発作などの全身症状が見られる。
犬の腎臓病の原因
急性腎障害の原因
急性腎障害は、突然の腎機能の低下を示す病状で、その原因は多岐にわたります。
最も一般的な原因の一つは、感染症です。細菌やウイルスが腎臓に影響を及ぼすことで、急激に症状が現れます。
また、毒物や薬剤の摂取も急性腎障害を引き起こすことがあります。食品ではブドウやレーズン、植物ではユリやチューリップ、特定の薬剤や化学物質が腎臓に悪影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。
さらに、重度の脱水症状も急性腎障害を引き起こす要因となり得ます。水分不足は腎臓の機能に大きな影響を与えるため、十分な水分補給が重要です。
慢性腎臓病の原因
慢性腎臓病は、犬において非常に一般的な疾患の一つです。
その原因は主に加齢に伴う腎機能の低下です。年齢とともに腎臓の機能が徐々に衰えていくため、特にシニア犬には多く見られます。
また、慢性腎臓病は遺伝的要素も影響しています。国際獣医腎臓病研究グループによると以下の犬種が腎臓病になりやすいと言われています。
・ブルテリア
・イングリッシュ・コッカー・スパニエル
・キャバリア
・ウェスト・ハイランド・ホワイトテリア
・ボクサー
・シャーペイ
さらに、糖尿病や高血圧も腎臓に深刻な影響を与える可能性があります。
犬の腎臓病の治療法
急性腎障害の治療法
急性腎障害の治療法は、迅速な対応が求められます。まず、獣医師は状態を評価し、適切な診断を行った上で治療計画を立てます。
水分補給が重要なため、点滴による補液治療が一般的です。これにより、脱水状態を改善し、腎機能をサポートすることで血液中の毒素を体外へ排出しやすくします。
さらに、具体的な原因によっては、中毒物質を吐かせるための薬の投与などその他の薬剤が処方されることがあります。栄養管理も大切で、低タンパク質の食事を提案されることがあります。
急性腎障害では早めに対処することで腎機能の回復が期待できるため、愛犬の不調を感じたときは早期の治療が求められます。
慢性腎臓病の治療法
慢性腎臓病は、特に高齢犬に多く見られる疾患です。
急性腎障害と異なり、慢性腎臓病では気が付いた時には腎臓の組織が破壊されていることがほとんどです。
破壊されてしまった組織を回復させる方法はなく、症状の緩和と、腎臓の負担軽減を目的とした治療が行われます。
代表的な治療法として、食事療法が重要です。低タンパク質、低リンの特別な食事を提供することで、腎臓への負担を軽減します。また、必ず水分補給を意識することが必要です。
そのほか、獣医師の指導に基づいて薬物療法も行われます。
具体的には、高血圧を改善する薬や、腎機能をサポートする犬用サプリメントなどがあります。定期的な検査も欠かさずに行い、症状の進行を防ぐことが大切です。愛犬の状態に応じた適切な治療を受けることで、生活の質を向上させることが可能です。
特別な食事を食べてくれないときは?
愛犬のことを気遣って、動物病院で療法食を購入したが食べてくれない。
人であれば食べなくてはならないものは我慢して食べることは可能ですが、犬はそうはいきません。
その場合、もともと使用していたフードからいきなり変えるのではなく、少しずつ混ぜるように切り替えてあげると食べてくれるかもしれません。
または、リンゴやサツマイモなど犬の好きなものを少量加えるなど、工夫してみてもいいでしょう。
しかし、ささみなどのたんぱく質が多く含まれているお肉は腎臓の老廃物を溜めてしまう可能性もあるため、獣医師とよく相談して与えましょう。
ほかにも電子レンジで温め、香りを出すことで、食欲を刺激することができるかもしてません。
犬の腎臓病の予防法
腎臓病を完全に予防するのは難しいものの、犬の腎臓病を予防するためには、いくつかのポイントがあります。
まず、定期的な健康診断を受けることが重要です。早期発見が病気の進行を防ぎます。
十分な水分を摂取させることも、腎臓の健康を維持するために欠かせません。
新鮮な水がいつでも飲める環境を保つようしてあげましょう。こまめに水を与えることで、尿の濃度を薄め、腎臓に負担をかけにくくなります。
まとめ
犬の腎臓病は、早期発見が非常に重要です。症状や原因を理解することで、愛犬の健康管理に役立てることができます。
腎臓病の進行を遅らせるためには、食事の見直しや定期的な健康診断が効果的です。愛犬に適したフード選びや、獣医師との相談を大切にしましょう。
犬の健康を守るために、日々のケアを欠かさず行ってください。愛犬との幸せな時間を長く楽しむためには、腎臓病の知識を持っておくことが欠かせません。