アニマルウェルフェア(動物福祉)を知る~ペットを守る「5つの自由」とは~

2022年3月8日/最終更新日時:2026年2月26日

アニマルウェルフェア(動物福祉)を知る~ペットを守る「5つの自由」とは~

少し暖かい日も増えてきましたね。
先日は、窓から見える紅白の梅の木にメジロが遊びに来ていました。「梅に鶯」ではありませんが、春を心から感じる美しい風景でした。
しかし、雨の日などまだ底冷えする寒さもあり、そんな日はうちの動物たちはあまり動かず、猫は回していた乾燥機の辺りで丸くなって寝ていました。彼らは家の中でも、スポットで一番暖かい場所をよく知っているのです。

暖かい場所で休む動物

思えば現代の人間は、寒さや風雨からは隔絶された別世界のように快適な家に住むようになりました。しかし、人間もかつては洞穴生活をしていて、自然界の容赦ない生存競争に曝されていたはずです。
そして、なんとその頃からすでに伴侶動物(コンパニオン・アニマル)と暮らし始めていたのです。動物との暮らしの歴史の長さと変遷には、本当に「すごい!」と感動します。

毎日の暮らしの中では、天候はもちろん、野生動物も脅威であったはずです。人間より鋭い危険察知能力を持つ動物たちに、私たちの祖先は助けられていたことでしょう。
しかも、人間より体温が少し高い動物たちとの触れあいは、特に寒い冬には心身を温めてくれる、かけがえのない交流だったのではないでしょうか。

伴侶動物を守る「3本の柱」と人間の責任

伴侶動物には、守るべき「3本の柱(福祉・教育・医療)」があります。
これらを礎にして、動物の生涯を私たちが「預かり主」として守っていくのです。そして、この柱が守られるかどうかは、私たち人間──つまりは伴侶動物の家族次第ということでもあります。

数十年前までは、外を彷徨う犬たちを保護することが頻繁にありましたが、最近の都心では犬が彷徨っていることはまずなくなりました。外の猫の保護と譲渡もかなり進んでおり、都内では区域内での外の猫自体の数がほぼゼロになっている場所もあるほどです。

しかし一方で、最近では自身でケアができない数の動物を家に入れてしまい、飼育環境が崩壊してしまう「多頭飼育崩壊」のニュースが後を絶ちません。
アニマルホーダー(動物収集癖)と呼ばれる状態に陥る方や、プロとして繁殖していた方が崩壊をきたすこともあります。私たちもそうした動物の譲渡をお手伝いしていますが、適切な環境で成長していれば起きなかったはずの障害を抱えてしまっている子犬・子猫を見かけることもあります。
命を預かる人間の責任は、本当に大きいと痛感します。

アニマルウェルフェア(AW)「5つの自由」とは

赤坂見附で保護され、病院で過ごした動物たち
▲ 20年以上前に赤坂見附で保護され、赤坂動物病院で過ごしたスーパーとステファン

皆様は「アニマルウェルフェア(動物福祉:AW)」という言葉を耳にされたことがあるでしょうか。
現時点では日本ではまだまだ認知度が低いと言われていますが、最近では様々な場面で話題に上がるようになり、一般の方々にも認識が広まりつつあります。

アニマルウェルフェアとは、動物が生きていく上で「必ず守られなくてはいけない原則」を示したものです。具体的には、以下の「5つの自由(Five Freedoms)」として国際的に定義されています。

アニマルウェルフェア 5つの自由
  1. 飢えと渇きからの自由
  2. 不快からの自由(適切な飼育環境の提供)
  3. 痛み、怪我、病気からの自由
  4. 恐怖や抑圧からの自由
  5. 動物本来の自然な行動をとる自由(習性を制限されない)

アニマルウェルフェアの始まりと広がり

この考え方は元々、1960年代に産業動物(家畜)分野の悪劣な飼育環境を改善するために、イギリスで提唱されたものです。
家畜福祉の活動家であるルース・ハリソンという女性が著した『アニマル・マシーン』の中で示された、当時の畜産事情への問題提起が世間を動かしたと言われています。(化学物質による地球環境への悪影響を提言した『沈黙の春』の著者、レイチェル・カーソンもこの書を推薦しています。)

アニマルウェルフェアに関する書籍

日本でも、より良い品質を保つ努力を続ける畜産業の方々の間では、この「5つの自由」が実践されつつあります。産業動物であっても、生きている間の環境が豊かで快適であることで、結果的に病気の発生も少なく、より良い状態で維持できることが分かってきています。

伴侶動物の実質的な「親」であり家族である私たちは、医療・福祉・教育の3本柱とともに、この「5つの自由」を十分に考えて生涯を共にしたいものです。

💡 「病気からの自由」を守るためにできること

「5つの自由」の1つである健康を守るため、日々の栄養管理は重要です。
愛犬・愛猫の健やかな毎日をサポートする、サプリメントの活用法をご紹介しています。

最後に~One Health(ワンヘルス)の時代へ~

人と動物の共生

「アニマルウェルフェア 5つの自由」をよく噛みしめてみると、伴侶動物にも産業動物にも野生動物にも重要なことであるとともに、私たち人間の生活の中でも「失っているもの」があるように思えてきませんか?

今や世界は「One Health(ワンヘルス:人と動物と地球環境の健全は切っても切り離せない一つの健康である)」の時代です。ただ一つの地球環境をいかに守るかということが問われています。
人間同士が互いを尊重し、最低でも世界平和を遵守し、慈しみ合っていかなくてはいけない大切な時代ではないでしょうか。


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この記事の執筆者

柴内 晶子 先生(赤坂動物病院 3代目院長)

東京都港区赤坂にて55年以上に渡り、人と動物双方の福祉、教育、医療にかかわり、豊かな社会作りに貢献している「赤坂動物病院」の3代目院長。
「伴侶動物(コンパニオン・アニマル)との幸せな共生」をテーマに、獣医療の枠を超えたトータルケアを提唱しています。

🏥 赤坂動物病院(予約制・365日開院)

住所 〒107-0052 東京都港区赤坂4丁目1-29 赤菱ビル 2F
電話 03-3583-5852
(受付:平日9:30-18:00 / 土日祝9:30-17:00)