【獣医師執筆】共に生きる楽しみを知る~保護犬さんと保護猫ちゃんのこと~

2022年10月25日/最終更新日:2026年4月28日

共に生きる楽しみを知る~保護犬さんと保護猫ちゃんのこと~

皆様こんにちは。

今回は、私が獣医師として臨床現場で関わってきた「保護動物(保護犬・保護猫)」について、2回に分けてお伝えしたいと思います。第1回目は、日本の保護動物を取り巻く環境の変化と、私の愛した一頭の保護犬とのエピソードです。

保護犬・保護猫のイメージ

保護犬・保護猫を取り巻く日本の変化

もう30〜40年も前になりますが、かつては東京でも一人歩き(放し飼いや迷子)をしている犬たちを見かけました。当院でも何頭か保護し、譲渡がままならなかった子はそのまま「病院の子」として生涯面倒を見ていました。

しかし、この50年ほどで状況は大きく変わりました。
環境省のデータによると、2004年の犬と猫の引き取り数は約41万頭でしたが、2020年には約7万2千頭にまで減少しています。
日本社会の中で、動物の愛護・保護・管理に関する意識が法律的にも見直され、一般の皆様の意識も大きく変わってきたことの表れです。

「One Welfare(ワンウェルフェア)」という考え方

近年、伴侶動物(ペット)が人間と共にあることが、人の心身に大きな恩恵をもたらすことが明確になってきました。
現在では、人も動物も共に幸せになれる社会を目指さなければ、人類や地球の存続すら危ういと認識されるようになっています。

人と動物と地球環境の福祉は一つであるという「One Welfare(ワンウェルフェア)」は、今とても重要なキーワードです。保護頭数が減っているのは喜ばしいことですが、多頭飼育崩壊など、現場で解決しなければならない課題はまだまだ山積しています。

保護犬「ステファン」が教えてくれた、共に生きる喜び

保護犬や保護猫を家族に迎えるにあたり、「成犬(成猫)からでも懐くの?」「しつけはできるの?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。
ここで、当院で生涯を全うした迷子犬、雑種の「ステファン」とのエピソードをご紹介します。

スーパー君とステファンちゃん
▲赤坂の街を彷徨っていたスーパー君とステファンちゃん

私が出会った頃、ステファン(男の子の名前ですが女の子です)はすでに推定7歳の中年犬で、普段は無感動で淡々とした性格でした。

その当時(1986年頃)、日本には「新しい犬のしつけ」の波が押し寄せていました。
全米ドッグトレーナー協会会長のテリー・ライアン先生が来日し、今では当たり前となった「褒めてしつける(ポジティブ・トレーニング)」という手法と、犬の目線で考える思考を日本に初めて伝授してくださっていたのです。

テリーライアン先生
▲テリー・ライアン先生

成犬でも、人は変われる、犬も変われる

テリー先生の限られたしつけの授業に、私はステファンと一緒に参加することにしました。
「中年を過ぎた迷い犬で、感動に薄いステファンが、果たして『おすわり』や『伏せ』を学習できるのだろうか?」
ハンドラーである私もステファンも初めての体験で、最初は心もとない日々でした。

しかし、しつけを通じて日々学んでいく中で、驚くべき変化が起きました。ステファンの目の輝きが、日に日に増していくのが分かったのです。

犬と共に学ぶ目的は、ただ単に「おすわり」や「待て」ができるようになることではありません。私が真剣にステファンに向き合うことで、彼女の本来の能力が引き出され、輝きを増していく。
そして私もまた、犬という動物をより深く知り、理解し、愛情が深まっていく……。
「犬という動物の本質を知り、共に生きる楽しみを知る」という、なんとも素晴らしいギフトでした。

心が見えない「絆」で結ばれた瞬間

ステファンが初めて、私の伝える意志を理解した!と分かった瞬間。
そこには確かに、目に見えない「絆」を感じました。
彼女が好きではなかった「伏せ」を理解し、ゆっくりと体を低くしたその瞬間の喜びを、私もステファンも一生忘れないでしょう。

ステファンはすでに虹の橋へ旅立っていますが、気ままな性格はそのままに、トレーニングの時には目をキラキラと輝かせて、素晴らしい生涯を全うしてくれました。

保護猫の写真
▲丸の内の駐車場を一人疾走していたところを保護した猫。今はすっかり成長しています。

💡 共に生きる日々を「健康」で支える

新しい家族との絆を深めるトレーニングや遊びの時間は、元気な体があってこそ。毎日の食事にプラスして手軽に栄養を補給し、健康維持をサポートするサプリメントの活用法をご紹介します。

最後に

今回は、1980年頃に出会った私の大切な保護犬とのエピソードをお話ししました。年齢を重ねた保護動物であっても、人が真剣に向き合えば、必ず素晴らしい絆を結ぶことができます。

次回は、現代の「現在の保護犬猫ちゃんのこと」をお伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。



柴内晶子先生が執筆された記事一覧はこちらからご覧いただけます。

この記事の執筆者

柴内 晶子 先生(赤坂動物病院 3代目院長)

東京都港区赤坂にて55年以上に渡り、人と動物双方の福祉、教育、医療にかかわり、豊かな社会作りに貢献している「赤坂動物病院」の3代目院長。
「伴侶動物(コンパニオン・アニマル)との幸せな共生」をテーマに、獣医療の枠を超えたトータルケアを提唱しています。

🏥 赤坂動物病院(予約制・365日開院)

住所 〒107-0052 東京都港区赤坂4丁目1-29 赤菱ビル 2F
電話 03-3583-5852
(受付:平日9:30-18:00 / 土日祝9:30-17:00)