人と動物の絆を護る「狂犬病ワクチン」~なぜ毎年の接種が義務なのか~

2022年5月24日/最終更新日:2026年6月3日

人と動物の絆を護る「狂犬病ワクチン」~なぜ毎年の接種が義務なのか~

皆様、こんにちは。
愛犬や愛猫とのお散歩やお出かけが気持ちよくなってくる季節、いかがお過ごしでしょうか。植物や少し湿った土の良い香りがする風を感じながら、動物たちと共に歩く時間は、何にも代えがたい喜びですね。

風を感じる犬

さて、今回は私たち人間と愛犬の命を守るための大切なテーマ、「狂犬病の予防接種」についてお話ししたいと思います。

狂犬病の予防接種はお済みですか?

狂犬病ワクチンは、毎年必ず犬たちに接種する「義務」があります。
通常、その接種期間は毎年4月〜6月の間と定められています。この義務は「狂犬病予防法」という厚生労働省が管轄する法律によって管理されており、動物への接種を通じて人間を狂犬病から護るための法律なのです。

※狂犬病予防法施行規則の改正(令和9年3月2日)において、狂犬病予防注射の通年での接種が可能となりました。
詳しい内容はお住いの市区町村のHPをご覧ください

犬を迎えたご家族には、以下の義務があります。

  • 生後91日齢以上の犬と暮らし始めてから、30日以内に市区町村へ「登録」を行い、鑑札の交付を受けること。
  • 毎年1回の狂犬病予防注射を受け、「注射済票」と「鑑札」を犬の首輪やリードにつけておくこと。

これらに違反すると罰金の対象となるため、必ず守らなくてはいけません。

ワクチン接種前の説明書と同意書
▲赤坂動物病院でお渡ししているワクチン接種前の説明書と同意書
鑑札と注射済票

致死率ほぼ100%。狂犬病の恐ろしさ

なぜそこまで厳しく法律で定められているのでしょうか。
それは、狂犬病がすべての哺乳類に感染し、一度発症してしまうと「致死率がほぼ100%」という、大変恐ろしい感染症だからです。

感染から発症までには1〜3ヵ月(時に年単位)の潜伏期間がありますが、発症してしまうと有効な治療法はありません。世界では今でも、年間5万人以上がこの病気で亡くなっています。
私も教育講座で、狂犬病を発症した犬と人、両方の記録動画を見たことがありますが、いずれも目を覆いたくなるような過酷なものでした。愛する家族を、そして私たち自身を守るために、毎年の予防接種が絶対に必要なのです。

日本は世界でも珍しい「狂犬病の清浄国」

日本では、1956年を最後に国内感染で亡くなった方は出ていません。動物でも1957年の猫の発症例を最後に出ていません。
実は、日本は世界でも数少ない「狂犬病の清浄国」なのです。島国であることも大きな要因ですが、これは先人たちの徹底した予防と検疫の賜物です。
現時点で清浄国・地域とされているのは、日本のほか、オーストラリア、ニュージーランド、イギリス、ハワイなどわずか11カ所しかありません。(そのため、海外から日本へ動物が入国する際の検疫は非常に厳しいのです。)

▶参考:厚生労働省 検疫所ホームページ

海外旅行での注意点と万が一の対処法

日本の周辺国や、多くの国々には未だに狂犬病が存在しています。
今後、皆様が海外旅行に行かれる場合、たとえ先進国であっても、街中や自然にいる「人の管理下にない動物(野生動物や野良犬・野良猫など)」には、絶対に気軽に触ってはいけません。可愛らしいリスや鳥、草食動物であっても同様です。

野生動物には触れない

万が一、海外で狂犬病の疑いがある動物に噛まれたり、傷のある皮膚を舐められたりした場合、すぐに患部を石鹸と水で徹底的に洗い流し、現地の医療機関で「曝露後(ばくろご)ワクチン」などの緊急処置を受ける必要があります。
しかし、発症を完全に食い止められるか、感染しているかどうかを早期に明確に知る方法はありません。何より「触らない・近づかない」ことが最大の予防です。

ワクチン接種時の「体調確認」と「副反応」

伴侶動物に狂犬病ワクチンを接種する際は、他の混合ワクチンと同様に、必ず事前に獣医師の診察を受け、当日の体調を確認してから接種してもらうようにしてください。

接種後、数十分は動物病院内や待合室で様子を観察(要観察)し、その後数日間は激しい運動を避け、体調の変化に気をつけて過ごしましょう。それまで元気でも、ワクチンによる副反応(アレルギー反応など)が現れる場合があります。

また、重い持病があるなど、ワクチン接種がその動物の命に関わる(デメリットが大きすぎる)と主治医が判断した場合は、「狂犬病予防注射猶予証明書」が発行されることもあります。しかし、これは容易に発行されるものではなく、獣医師の慎重な判断に基づきます。

💡 ワクチン接種を元気に乗り切るために

ワクチンをしっかり打ち、健やかな毎日を送るためには「日頃の体調管理」が欠かせません。毎日の食事にプラスして健康を維持する、サプリメントの活用法をご紹介します。

狂犬病という恐ろしい病気の侵入や流行を防ぎ、愛犬と飼い主様自身の安全を守るために。基本ルールとして、毎年の狂犬病ワクチン接種をしっかりと行っていきましょう。


柴内晶子先生が執筆された記事一覧はこちらからご覧いただけます。

この記事の執筆者

柴内 晶子 先生(赤坂動物病院 3代目院長)

東京都港区赤坂にて55年以上に渡り、人と動物双方の福祉、教育、医療にかかわり、豊かな社会作りに貢献している「赤坂動物病院」の3代目院長。
「伴侶動物(コンパニオン・アニマル)との幸せな共生」をテーマに、獣医療の枠を超えたトータルケアを提唱しています。

🏥 赤坂動物病院(予約制・365日開院)

住所 〒107-0052 東京都港区赤坂4丁目1-29 赤菱ビル 2F
電話 03-3583-5852
(受付:平日9:30-18:00 / 土日祝9:30-17:00)